3.29.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(9) CHAPTER 3 [P103〜P105]

<P103>
フラフープ:腰で回して遊ぶ輪状の遊具。1958年にアメリカで大流行した。

ジルバ:スイングダンスの一種。1930年代後半にアメリカで流行し、第二次大戦を通して世界に広まった。

マッカーシー:ジョセフ・マッカーシー上院議員(1908〜1957)。共和党所属。狂信的なまでの反共主義者で、1950年代前半のアメリカに、集団ヒステリーともいうべき反共主義"マッカーシズム"を引き起こした。1950年、国務省内に205人もの共産主義者がいると告発。戦後間もなくから高まっていた反共感情に火をつけ、一躍、時代の寵児となった。"赤狩り"と呼ばれた告発の矛先は、ついには所属する共和党政権、合衆国陸軍にまで及んだが、偽証、密告など手段を問わない強引な姿勢に批判が高まり、54年、上院に不名誉をもたらしたとして事実上の不信任決議を受ける結果となった。
こうして急速に影響力を失った彼は、57年に急性肝炎で死去したが、一般にまで広がった反共感情は、その後も長くアメリカを支配することになる。ちなみに、赤狩りはハリウッド映画のような娯楽分野にも及んでおり、先に述べたコミックス・コードの制定もその影響下にあったと言えよう。(※解説記事(1)を参照)

HUAC/下院非米活動委員会:1938年に外国のスパイ活動を監視する意味で設立された委員会で、戦後は共産主義者の告発に力を注いだ。赤狩りの総本山であり、1947年、ハリウッドの映画人10人を、自分は共産主義者ではないとの証言を拒んだとして、議会侮辱罪で投獄した一件は、特に社会の注目を集めた。なかば中世の魔女裁判のごとく一方的に容疑者を吊るし上げ、社会的に抹殺するそのやり方には批判も多かったが、委員会が廃止されたのは1975年のことだった。
ちなみに、HUACの横暴はDCコミックスの歴史にも組み込まれている。1940年に誕生した世界初のスーパーヒーローチ−ム、ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカは、人気の低下から1951年に誌上から姿を消したが、1962年に復活した際、彼らの10年に及ぶ不在は、単なる引退としか説明されなかった。しかし、1979年に発表されたあるストーリーで、彼らは1951年にHUACに正体を明かすように強制されたため、やむなく引退の道を選んだのだと説明が加えられたのである。ミニッツメンとHUACの一件が、このエピソードを基にしていることは言うまでもない。
世界最古のヒーローチーム、ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ


左翼の学生と〜:世界的な経済恐慌にあった1930年代、共産主義は理想主義の学生の間で人気があった。

<P104>
東ドイツ:正式名称は「ドイツ民主共和国」。1949年、敗戦国ドイツのソビエト占領地域に建国された社会主義国家。アメリカ、イギリス、フランス占領区域に建国されたドイツ連邦共和国(西ドイツ)と長く対立関係にあったが、1990年に西ドイツに吸収され消滅した。

<P105>
ビート族:1950年代に登場した、因習的な行動や服装を否定する若者たちの総称。

エルヴィス・プレスリー:(1935〜1977) ロックンロールの帝王。ビートルズなど、あらゆるアーティストに大きな影響を与え、その名は今なお輝いているが、デビュー当時は、そのセクシーな仕種が卑猥だとして非難を受けることも少なくなかった。

ミニスカート:1960年代初頭、イギリスから発生したファッション。足を剥き出しにしたそのスタイルは、古い世代の顔をしかめさせた。

ビートルズ:(活動期間1962〜1970) イギリスが生んだ今世紀最高のスーパーグループ。とはいえ、デビュー当時は、その奇抜なファッションを揶揄されることも多かった。

TEXT BY 石川裕人