2.12.2010

「ウォッチメン」原作コミック解説(24) CHAPTER 8 [P248〜P272]

<P248>
PANEL6

10月20日にアフガニスタンに侵攻したソビエト軍は、6日ほどで国土を縦断し、わずか1日でパキスタン軍の防衛線を蹴散らした事になる。パキスタンはアメリカに介入を依頼していたが、米軍は動かなかった模様(P222 PANEL5P245 PANEL3参照)。
なお現実世界では、アメリカはアフガニスタンに侵攻したソ連に対抗するため、パキスタンの軍事独裁政権を援助していた。

<P249>
PANEL3

リンカーン記念館:第16代合衆国大統領アブラハム・リンカーンを記念した国立記念館。高さ約6メートルの巨大なリンカーンの坐像がシンボルで、壁には「人民の、人民による、人民のための政治」の一節で有名なゲティスバーグ演説が刻まれている。

<P248>
PANEL5

レーガン、カリフォルニア州知事:現実世界においてレーガンがカリフォルニア州知事を務めていたのは1967年から75年にかけて。

レーガン:ロナルド・レーガン(1911〜2004)。第40代合衆国大統領。共和党所属。1940年代は映画俳優として活躍。映画俳優協会会長、カリフォルニア州知事を経て、1980年の選挙で大統領に当選。強いアメリカの復活を掲げ軍備増強を進める一方、大幅減税による経済復興計画レーガノミクスを実施。財政赤字は倍増したものの、経済回復を成功させた。対外的には、グレナダ侵攻、リビア爆撃と第三世界に睨みを効かせ、ソ連との対決姿勢を強めて行ったが、1986年に改革派のゴルバチョフがソ連の書記長に就任すると一転して協調路線に転向。訪ソを果たし、緊張緩和路線によって東西冷戦に終止符を打った。

<P252>
PANEL8

ローリーがタバコを置き忘れている。ファイン刑事に気づかれたか。

<P253>
PANEL9

明日までに〜:この日は10月30日(水)。ドライバーグはP248-249と同じ服を着ているように見えるが、実は3日も経っている。

<P254>
PANEL1

午後には〜:時刻は午前8時半すぎ。作業内容からこの日が10月30日とわかるが、前ページは同じ30日でも明らかに夜なので、時間が前後していることがわかる。

PANEL6
ハンキーヘッド:詳細は不明。アメリカの伝統料理を出す店でないのは確かだが。

正義は時に、鷹のように〜:ヒーローたちの覆面と、アメリカの国鳥である白頭鷲の首から上の白い羽毛を、英語でフード(頭巾、覆面)と呼ぶことにかけている。

<P255>
PANEL1

例のアレの積み込み作業が続く中、船首に大きなシャッターのあるピラミッド宅配社の貨物船が近づいてくる。

PANEL4
漂流者の話:ナショナルコミックス刊『黒の船』#23、24に掲載された「漂流者」のこと。黒人少年バーニィが読み耽っているのは、そのリプリント版。

PANEL6
10月31日の日付に注目。前ページの最後のコマから、31日に移行しているものと思われる。

PANEL7
巨大なプラグからわかるように、アーチーの動力は電気である。

<P256>
PANEL1

教授とは、DR.マンハッタンことジョン・オスターマンのかつての上司ミルトン・グラスか。さすがに歳は取っているものの、ヴェイトの標的にはならずにすんだ模様。ニュースでコメントを求められるほど社会的認知度の高いグラスを犠牲にした方が世間へのインパクトは強いように思えるが、次元開発社に引き入れるのに失敗したのか(P370 PANEL2参照)。

PANEL2
KKK:クー・クラックス・クランの略。南北戦争時代から続く白人至上主義者の秘密組織。伝統的なアメリカの習慣と価値観を脅かすとして、黒人、ユダヤ人、東洋人、社会主義者などを糾弾、時には殺人さえ辞さない無軌道ぶりで、世論の非難の的となった。最盛期は1920年代で、以降は衰退の一途を辿っている。

PANEL4
宅配会社とは、ヴェイト配下のピラミッド宅配社のことと思われる。

PANEL6
カボチャの目に汁が垂れて、おなじみのパターンを描いている。窓の外を、子供たちが通りすぎようとしている。この時に、メイソン宅に寄っていれば……。

PANEL7
P257ともども、上のコマとの対比に注意。

<P258>
PANEL2

感謝祭:アメリカの休日で、11月の第4木曜日。信教の自由を求め、17世紀にメイフラワー号でイギリスからアメリカに渡ったピルグリムファーザーズの、新大陸での最初の収穫を記念する行事。家族がそろって七面鳥を食べる習慣があり、家長が切り分ける。ちなみに、1985年の感謝祭は11月28日。

<P259>
PANEL4

コバックスの胸に飛び散った血の染みは、ブレア・ロッシュ誘拐事件の際に彼が浴びた犬の血の染みの形状に酷似している(P200 PANEL4参照)。

<P261>
PANEL8

10月21日の夜に逮捕されたコバックスが22日に投獄されたとすると、約10日分の排泄物が溜まっていたことになる。

<P262>
PANEL5

画面右の男は、警官の帽子を被った囚人。

<P266>
PANEL3

ドアの上のデジタル時計によれば、現在11時00〜09分。
コバックスが、また砂糖を失敬している。

<P267>
PANEL3

デウス・エクス・マキナ:ラテン語で機械仕掛けの神の意味。舞台用語で、都合よく現れて、入り組んだ物語を収拾するキャラクター、またはアイデアを指す。

<P268>
PANEL1

この鍵が壊されるのも、これで最後。

PANEL7
壁に吊るされていた外骨格強化服が置き捨てられている(P254 PANEL7参照)。荷物の積み込みに使用したものと思われる。画面左の潜水ヘルメットらしきものも、元の位置から移動している。念のために持って行こうとしてやめたのか。

<P269>
PANEL2

バーニィが読んでいるページの下半分は、広告ページになっている。実際の誌面上のコマの大きさの違いにも注目。

<P271>
PANEL1

時刻は、運命の12時5分前。こんな遅くまで子供だけで出歩いているのか。

PANEL5
メイソンがナイトオウルとして活躍していたのは、少なくとも23年前である。犬の平均寿命が約10年であることを考えると、回想シーンに登場している覆面姿の犬と、現在彼が飼っているファントムが同じ犬だとは考えにくいが、DR.マンハッタンによって何らかの延命方法が考案されているのかもしれない。

PANEL7
ナイトオウルのパンチを食らっているのがスクリーミング・スカル。画面右奥はキャプテン・アクシスで、左がモーロック。

<P272>
PANEL1

メイソンの右目を横切った髪がおなじみのパターンを描いている。

PANEL7
記念写真のナイトオウルもまた同様である。

PANEL8
エレノア・ファージョン(1881〜1965):イギリスの女流童話作家。宮崎駿が、影響を受けた人物に名前を挙げている。