以降、12話を除く各話の巻末に付くテキストページは、実は当初の構想にあったものではないという。
そもそも『ウォッチメン』は、コミック部分が32ページ、表紙周りが4ページという、標準的な構成となっているが、通常のコミックだと、32ページ中、8~10ページ程が、広告や読者ページに使われる。『ウォッチメン』も当初は広告や読者ページの挿入を考えていたというが、思うように広告が集まらなかったこと、読者ページを設けた場合、当然ながら終盤の号への投稿を掲載することができないなど、様々な問題が発生したため、テキストページを設けることになったという。
既に作業が3、4号まで進んでの変更だったというが、ムーア自身は「広告も読者ページもないなんて、普通のコミックスらしくなくていいじゃないか」と、大乗り気だったらしい。
ちなみに、1983年に発売されたフランク・ミラーの『ローニン』では、DCの歴史上初めて、作者の意図として広告、読者ページが省かれていたが、そのこともムーアの頭にあったのかもしれない。
ワルキューレの騎行:歌劇王ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』4部作のうち2作目『ワルキューレ』より、第3幕の序奏、8人のワルキューレが岩山に集うシーンで演奏される。
<P34>
コニーアイランド:ニューヨーク東部ブルックリンの南端にあるリゾート地。
<P37>
ドク・サベッジ:パルプ雑誌を代表するヒーロー。1933年に『ドク・サベッジ・マガジン』創刊号で初登場した。本名クラーク・サベッジJr。超人的頭脳と体力を駆使し、5人の仲間と共に大冒険を繰り広げる。その褐色の肌から、ブロンズの男の異名を持つ。スーパーマンに大きな影響を与えた。
シャドウ:同じくパルプ雑誌のヒーロー。1930年にラジオ番組『デテクティブ・ストーリー・アワー』で初登場し、翌年、パルプ雑誌化された。本名ケント・アラード。45口径オートマチックと東洋の秘術を武器に、犯罪者の肝を凍らせる高笑いとともに冷徹な裁きを下す影の男。
ラモント・クランストン:シャドウの正体であるケント・アラードが使用している偽名。
アクションコミックス:1938年6月に、ナショナル社(後のDCコミックス)が創刊したコミックス。超人スーパーマン、魔法使いザターラ、探偵テックス・トンプソンなどの作品が掲載されていたが、世界初のスーパーヒーローであるスーパーマンが大人気となり、現在まで続く長寿作品となった。
<P38>
スーパーマン:アメリカを代表するスーパーヒーロー。本名クラーク・ケント。惑星クリプトン最後の生き残りで、飛行能力、怪力など、数々のスーパーパワーを振るい、正義と真実とアメリカンウェイを守るために戦う。普段は、デイリー・プラネット新聞の記者として働いている。世界初のスーパーヒーローであり、その後に続く幾千のヒーローの父ともいうべき存在である。
マーゴ・レーン:シャドウことラモント・クランストンのガールフレンドで、彼がシャドウではないかと疑っている。後にシャドウの協力者の一人となる。
クラーク・ケント:スーパーマンの正体。クラークの名は、ドク・サベッジとシャドウの本名を組み合わせたものである。
ロイス:フルネームはロイス・レーン。デイリー・プラネット新聞社に勤める女性記者。クラークの憧れの人だが、彼女はスーパーマンに夢中である。ロイスの名は、スーパーマンの原作者であるジェリー・シーゲルとジョー・シュースターの高校時代のマドンナの名前と、シャドウの恋人マーゴ・レーンの名字を組み合わせたもの。
TEXT BY 石川裕人