5.01.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(14) CHAPTER 5 [P142〜P154]

<P142>
Rを並べたラムランナーのロゴマークは、海賊旗を連想させる。

画面上部にロールシャッハの帽子がかすかに見えている。

画面左上の新聞は、前日10月20日のもの。「夜半、激しい雷雨」との予報だが、今日もまだ雨が降り続いている。

<P143>
PANEL3

水たまりを踏んでいるのはロールシャッハの足。以後、ロールシャッハは、この水たまりを何度も踏むことになる。

PANEL7
画面右に酒場「ラムランナー」のネオンが見える。2話でネオンの存在は示唆されていたが、実際に描かれるのは初めてである。
張出窓の右上の窓がモーロックの寝室。すぐ隣にネオンがあるので、どうにも落ち着かないと思うのだが、彼の今の懐具合では贅沢も言っていられないのだろう(P61-63参照)。

<P145>
PANEL2

机に置いてあるのは、TV情報誌の定番『TVガイド』。家ではいつも、この椅子に座ってTVを眺めているのだろう。

PANEL4
ゴルディアン・ノット社製の鍵は、またも役目を果たしていない。この鍵が正面から描かれたのはこれが初めてだが、よく見ると、このドアにはノブがない。作品世界のドアが全てそうなのかはわからないが、少なくともゴルディアン・ノット社製の鍵を開けるには、正しい鍵を差し込む以外になく、鍵無しでドアを開けるには、無理やりにこじ開けるなどするしかない。つまり、ゴルディアン・ノットの名は、その開け方まで含めての選択だったのだ。

PANEL5
冷蔵庫から出された食品の山と、扉からはみ出たロールシャッハのコートに気づいたモーロックが、勘弁してくれと言わんばかりの表情を浮かべている。前回の訪問では冷蔵庫の異変に気づかなかったが、さすがに学習したのだろう(P60 PANEL5参照)。

PANEL9
ロールシャッハの直筆。小文字と大文字が混じっている。
ちなみにロールシャッハの日誌は、原書では基本的に大文字で書かれているが、aとeとnとyだけが小文字になっており、彼の精神的な危うさを表現している。このメモでは、日誌では大文字のiも小文字になっているが、その理由は?

<P148>
PANEL6

土曜から〜:土曜日は19日。今日は21日なので、丸二日寝ていないことになる。

<P149>
PANEL1

仏陀を中心とする東洋風のポスターが貼ってある。かなり年季の入った様子で、60年代末にアメリカで東洋思想が流行したことを考えると、この家の主人のおおよその年齢や主義主張が想像できる。

飛び散った血が仏陀の右目にかかり、ピースマークの血痕を思わせる。

PANEL3
今日からお前の〜:1960年代末に流行した格言。

PANEL5
吹き出しでよく見えないが、奥のポスターには「NO NUKES(核兵器廃絶)」と書いてあると思しい。

PANEL6
奥のポスターは、ロックバンド、グレイトフル・デッドの物。グレイトフル・デッドとは「感謝する死者」の意味。
グレイトフル・デッドと言えば、マスコットのテディベアが有名だが、前のコマで床に落ちているクマのぬいぐるみもその一つかもしれない。
グレイトフル・デッドのダンシング・ベアぬいぐるみ。色・柄に多様なバリエーションがあり、コレクターも多い。

PANEL7
被害者の少女の靴には、某有名犬のイラストが。
ちなみにあの犬の名前には「詮索好き」という意味がある。

PANEL9
ドアに飛び散った血しぶきのパターンは、ロールシャッハのコートのそれに酷似している(P200 PANEL4参照)。

<P150>
PANEL3

宅配社の運転手が充電を始めた。

PANEL4
アメリカに渡って〜:1933年、反ユダヤ主義を掲げるナチス政権の樹立を受け、ドイツ、オーストリアから約25万人のユダヤ人がアメリカへと移住した。北アメリカ大陸へのユダヤ人の大量移住は、17世紀半ば(スペイン、ポルトガルより)、19世紀半ば(ドイツより)、19世紀末(東欧より)に続いて第四次を数えたが、当時のアメリカが移民受け入れに制限を設けていたことから、その数はさほど多くなく、また、科学者など知識階級が多く含まれていたことが特徴とされる。

新聞の見出しは「アフガニスタンの戦闘拡大」。

背景の研究所の看板は「ASS DIES」と読める。あえて訳すと「バカが死ぬ」。

PANEL5
もう充電が完了したらしい。

<P151>
PANEL3

切り株の間に剣が落ちている。この剣で木を切り倒したのか。

<P152>
PANEL2

ここで描かれたドライバーグとローリーは、店内の鏡に映った鏡像。このエピソードは、対称系というサブタイトルにこだわったのか、鏡像がしつこいほどに多用されている。

PANEL4
ガンガ・ダイナーの向かいにあるユートピア劇場では、1936年製作のSF映画の古典 『来るべき世界(原題THINGS TO COME)』 が上映されている。この作品は、第二次世界大戦の到来を予言したもので、人類は破滅の淵に立たされるものの、科学と英知が世界を救う結末になっていた。

若干わかりにくいが、ドライバーグ以外は鏡に映った鏡像。無理やりな構図にも思えるが、逡巡するドライバーグの表情と去り行くローリーを同じコマに収めるには、こうするしかないのも確か。

ガンガ・ダイナー付近の地図


<P153>
PANEL1

袖口のボタンが取れたままになっているのに注目。

奥の皿の汚れがロールシャッハ模様になっているのに注目。好物(?)の豆の缶詰は、やはりハインツ製。

PANEL2
割れた窓ガラスを入れ替える金もないのか、そもそも修理する気がないのか。

PANEL3
ベッドの下に、コバックスの愛読紙ニュー・フロンティアズマンが積んであり、彼の正体を示唆している。

枕の染みがリアル。

PANEL4
コバックスを見た子供達が怯えている。ロールシャッハならばわからなくもないが、素顔のコバックスには過剰反応にも思える。子供なりの直感でコバックスの本性を見抜いているのか。

PANEL6
P152 PANEL7を外から見た状態。左右の男女はPANEL4の男女と思しいが、歩いている方向が逆なので別人か。

<PNAEL8>
ロールシャッハが、ナプキンに描いたのは逆さまになったクエスチョンマーク。彼のモデルになったヒーロー、クエスチョンを意識してのことか。
日記ではこの行為に触れておらず、その後もこんな無意味な行動は見られない。どんな意味があるのだろうか?

<PAGE154>
PANEL1

アフガニスタンの次はパキスタンか?:現実では、ソ連はアメリカの支援を受けたアフガンゲリラの激しい抵抗に遭い、10年にわたって泥沼の戦いを続けることになる(後に彼らゲリラは反米に転じることになり、その中にはオサマ・ビンラディンもいた)。作品世界においては、アメリカの対応が間に合わなかったため、一気にパキスタンまで攻め込んだものと思われる。

P153 PANEL9を右側から見ている。

PANEL5
食事を終えたコバックスが店から出てきた。

PANEL9
コバックスがゴミ箱の中のメッセージを探している。