7.02.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(20) CHAPTER 7 [P210〜P225]

<P210>
ローリーの指の跡とゴーグルに映ったアーチーの機首が、ピースマークと破滅時計の双方を形作っている。

<P211>
PANEL7

ローリーはゴーグルと同じ位置に触れている。光が灯ったことで、コスチュームとアーチーに再び命が宿ったかのように見える。

<P213>
PANEL7

画面右端のケースの中のナイトオウルの像に注目。先輩のホリス・メイソン同様、引退の際に贈られたものか。

<P215>
PANEL3

記念品のケースの上には、フクロウの剥製らしきものが飾られている。かつてのペットか。

PANEL7
ハーバード:1636年に創立されたアメリカ最古の大学(私立)。ボストン郊外のケンブリッジ市に位置し、世界でも有数の名門校として知られる。

<P216>
PANEL1

77年には〜:反ヒーロー暴動の夜のことか(P56参照)。血は争えないらしい。

PANEL5
シートは、床の溝に沿って動く仕組みになっている(P218 PANEL4の三面図を参照)。

PANEL6
G.I.ジョー:1964年にハズブロ社が発売した世界初のアクションフィギュア。59年にライバルのマテル社が発売した女児向け着せ替え人形「バービー」の成功を受けて企画されたとされ、第二次大戦時の米軍をテーマに、ベトナム戦争開始当時の”戦記ブーム"に乗って大ヒットを記録した。21箇所が可動する約30cmのフィギュアを中心に、フィギュアに装備できる機関銃や迷彩服など、様々なアクセサリーを販売。トランスフォーマーと並ぶハズブロ社の主力商品として、形を変えながら今なお展開されている。ちなみにG.I.ジョーとは、第二次大戦時のアメリカ兵の俗称で、G.I.は、Government Issue(官給品)の略。
ところで、G.I.ジョーが女の子向けの玩具でないのは言うまでもないが、ローリーは1949年生まれなので、発売時は既に15歳だったことに…。

オレンジのユニフォームには放射能標識が描かれており、放射能防御機能があるものと思われる。なお、これらの特殊コスチュームは、極地用の白いバットスーツなど、様々な用途のコスチュームが登場する1950年11月発売の『ディテクティブコミックス』#165「バットマンの奇妙なコスチューム」が元ネタだろう。
『ディテクティブコミックス』#165の表紙。


<P217>
PANEL5

『王様の剣』 :1963年公開のディズニー長編アニメ映画。6世紀のブリテンに君臨した伝説の王アーサーの若き日の冒険を描いている。T・H・ホワイトが39年に発表した児童小説『永遠の王』の第一部を映画化したもので、みなしごの少年ワートが魔術師マーリンに見初められ、岩に刺さった剣を引き抜き、王の証を立てるまでを描いている。

アルキメデス:マーリンが飼っている喋るフクロウ。原作小説にも登場する。

魔術師マーリン:アーサーの助言者である魔術師。ワート少年の王たる資質を認め、彼に英才教育を施す。

PANEL8
本作では使用されなかったが、現役時代のナイトオウルは、バットマンばりにスーパーカーや小型ヘリを駆使していたらしい。

<P218>
PANEL4

円卓騎士団:アーサー王に仕えた騎士たちの呼び名。君主と臣下という身分の区別を嫌ったアーサー王は、配下の騎士たちを上座下座のない円卓に着かせた。いつしか円卓は、アーサー王の宮殿キャメロットの象徴となり、騎士たちは円卓の騎士と呼ばれるようになったのである。

三面図の内部図解によれば、エンジンスペースは非常に小さく、キャビンの後ろに2台のホバーバイクが収納してあるのがわかる。

<P219>
PANEL1

コートのボタンは全部ついていた:ロールシャッハは、ブレア・ロッシェ誘拐事件の際にコートのボタンとショルダーストラップが外れて以来、修繕せずにずっとそのままにしていた。コートは事件の際に着ていたもの以外にも、少なくとも1着は替えがあったようだが、そちらも同じ位置のボタンと肩ベルトが取れたままになっていた。取れた姿こそが”真”のロールシャッハだと考え、自ら千切ったとも考えられる(P12 PANEL1P200 PANEL4P318 PANEL2参照)。

PANEL9
ゴーグルには時刻表示機能もある。

<P220>
PANEL1

ニュートリノ:物質を構成する最小単位、素粒子の一種。1930年代にその存在が提唱されたものの、質量がゼロに等しく観測が極めて困難なため、今なお未解決の事象が多い。

PANEL2
ディーボ:1974年にオハイオ州で結成されたテクノ・バンド。1978年のアルバム 『頽廃的美学論』で、世界中にテクノ・ニューウェイブムーブメントを巻き起こした。なお、ディーボ(DEVO)とは、De-Evolution(退化)の略称で、彼らのテーマである「人間退化論」を象徴している。
エナジードームと呼ばれる奇妙な帽子や、ゴーグル、黄色のジャンプスーツなど、アート色の強い衣装が特徴。いかにもパンクなペイル・ホースとは、少なくとも見た目的には似ていないように思えるが…。
ディーボ


PANEL3
ビリー・ホリディ:実在の黒人女性ジャズ・シンガー(1915〜1959)。史上最高のシンガーと評されるが、その生涯は、貧困、人種差別、薬物有毒など、波乱の連続であった。1945年生まれのドライバーグにしては渋い趣味。普通ならこの世代はロックだろう。

<P221>
PANEL3

悪魔のように〜:ポーランドでは、挽いたコーヒー豆を厚手のグラスに入れ、お湯と砂糖を加え、豆がらが底に沈むのを待って飲むのが一般的だという。

PANEL6
テレビの上のフクロウの置物に注目。初代ナイトオウルから贈られたものか(P15 PANEL4参照)。

<P222>
PANEL3

ニュースの内容から、本章は10月25日から26日にかけての出来事だとわかる。

PANEL7
ニュース映像の戦車は、当時のソビエト軍の主力中戦車T-62か。
(画像はAce製プラモデル・パッケージ絵)


PANEL8
ヒロシマ特集:DR.マンハッタンが読んだ号と同じものだろう(P132 PANEL6参照)。

PANEL9
グリーナム・コモン基地:イングランド南東部バークシャー、グリーナム・コモンには米空軍の基地が置かれ、対ソ戦略の一翼を担っていたが、1982年、レーガン政権の陸上発射巡航ミサイル配備決定に際し、女性平和活動家を中心とする3万人が「人間の鎖」で抵抗、ミサイルの搬入を阻止した。反戦運動はその後も続き、2000年、ついに米軍基地は撤去された。イギリスの反戦運動の象徴であるグリーナムだが、劇中ではあえなく鎮圧されてしまった模様。

画面奥の電気パトカーに注目。

<P223>
PANEL1

マンハッタン・トランスファー:1972年に結成された男女各2名による人気コーラスグループ。DR.マンハッタンによる”トランスファー=転送”の駄洒落。

PANEL4
例のニューススタンドの角を曲がったところが高次空間研究所の入口。画面左端にバーナードとバーニィの姿がちらりと見えている。

<P224>
PANEL2

チャリティ公演P23 PANEL6参照。

PANEL4
机の上に置かれたノヴァ・エクスプレスの表紙のDR.マンハッタンが二人の様子を覗いている。

<P225>
PANEL3-4

時計を見ると、ドライバーグは実に4時間以上もがんばったようだが…。

人気バンド、ペイル・ホースのリーダー、レッド・デスが初登場。この二人が実況と解説とは、どんな番組だろうか。

PANEL2
時計によれば、放送終了は午前2時。