4.04.2010

第8章ラストシーン

本編では削除された、第8章ラストシーン。DVD、ブルーレイに収録されています。

2.12.2010

「ウォッチメン」原作コミック解説(25) CHAPTER 8 [P273〜P276]

<P273>
P254で、ゴッドフリーとシーモアの二人が懸命に仕上げていたのがこれらの紙面。

ポール・リヴィアの夜行:アメリカ独立戦争初の武力衝突となったレキシントンの戦いにおいて、伝令ポール・リヴィアは、イギリス軍の襲来を夜を徹して各地に伝え続け、後に愛国者の鑑と称えられた。

アラモの戦い:1835年、メキシコ領テキサスにおいて、アメリカ人入植者がメキシコからの独立を目指し蜂起。テキサス独立戦争が始まった。翌36年、アラモ砦に立てこもった155人のテキサス守備隊を、4千人のメキシコ軍が包囲。激戦の末、守備隊は全滅したが、復讐に燃えるテキサス独立軍はメキシコ軍を破り、独立を達成。1845年にアメリカ合衆国に加盟した。

ゲティスバーグの演説:1863年11月19日、南北戦争(1861〜1865)の天王山となったゲティスバーグの戦いの戦死者を弔う式典で、時のリンカーン大統領が行った演説。「人民の、人民による、人民のための政治」の一節は、あまりにも有名。

<P274>
マルキスト:ドイツの革命家カール・マルクスの掲げる科学的社会主義の信奉者。

ボストン茶会事件:1773年12月16日、植民地時代のアメリカで、逼迫した財政を植民地への課税によって補おうとしたイギリスへの不満が契機となって発生したイギリス船襲撃事件。アメリカ独立戦争の発端となった。

ローン・レンジャー:1933年にラジオでデビューした西部劇のヒーロー。本名ジョン・リード。テキサス・レンジャーの一員であった彼は、悪名高い強盗団のリーダー、ブッチ・キャベンディッシュ(映画『明日に向かって撃て』で有名な無法者ブッチ・キャシディがモデル)によって重傷を負わされるが、インディアンの友人トントの看病によって一命を取りとめた。自らの死を装った彼は覆面で正体を隠し、トントと愛馬シルバーと共に、西部に正義をもたらすことを誓ったのである。ちなみに、同じ原作者が創造したクライムファイター、グリーンホーネットは、ローン・レンジャーの甥の息子という設定。

ローン・レンジャー。写真は1949年〜1957年のテレビシリーズ。


1979年のベイルートの報復爆撃:ベイルートは中東レバノンの首都。第二次大戦中にフランスから独立したレバノンは、キリスト教徒も多く、リゾート地としても知られていたが、パレスチナ解放機構が活動拠点としたことから各宗教間のバランスが崩れ、1975年に内戦が勃発した。シリア、イスラエルなど、隣国を巻き込んだ内戦による混乱は、21世紀の現在まで尾を引いている。アメリカは1982年に多国籍軍の一員としてレバノンに進駐しているが、1979年の報復爆撃とは本作の創作である。

<P275>
鎖で後ろ手に縛られ、マルキストのダグ・ロスに覆面を剥がされたヒーローに襲いかかろうとしているのは、麻薬問題に少年非行、金に飢えた巨大企業に組織犯罪(ネクタイに描かれた黒い手(ブラックハンド)は、犯罪結社の象徴)。さらにその背後にはソ連が控えている。
このピンチにもかかわらず、一般大衆は無関心どころか眠りこけ(背中に「ジョン・Q・パブリック」と書いてあるが、これは平均的アメリカ人男性を指す言葉で、日本で言えば「山田太郎」のようなニュアンス)、ニューヨーク市警は"キーン"のフラッグを振って囃し立てている。善良な家族は成す術もなく立ち尽くすだけで、自由の女神も涙を流すことしかできない。しかも、これが最終ラウンドなのだ。このイラストを描いたのは、バーニィが読み続けている「漂流者」のアーティストだった、ウォルト・ファインバーグ(左下のサインに注目)。

<P276>
ノーマン・レイスP329 PANEL2参照。

ハイラ・マニッシュP255参照。

ジェイムズ・トラフォード・マーチ:他の人間はヴェイトの計画のために集められたが、作家はマックス・シェアがいるので、もう一人必要とは思えない。純粋に経済的な問題で失踪したと考えるのが自然だろう。

リネット・パリーP329 PANEL2参照。

ウィットネティカー・ファネッセP329 PANEL3参照。

ロバート・デスチェインズ:盗まれた脳の行方については、P329 PANEL3参照。

「ウォッチメン」原作コミック解説(24) CHAPTER 8 [P248〜P272]

<P248>
PANEL6

10月20日にアフガニスタンに侵攻したソビエト軍は、6日ほどで国土を縦断し、わずか1日でパキスタン軍の防衛線を蹴散らした事になる。パキスタンはアメリカに介入を依頼していたが、米軍は動かなかった模様(P222 PANEL5P245 PANEL3参照)。
なお現実世界では、アメリカはアフガニスタンに侵攻したソ連に対抗するため、パキスタンの軍事独裁政権を援助していた。

<P249>
PANEL3

リンカーン記念館:第16代合衆国大統領アブラハム・リンカーンを記念した国立記念館。高さ約6メートルの巨大なリンカーンの坐像がシンボルで、壁には「人民の、人民による、人民のための政治」の一節で有名なゲティスバーグ演説が刻まれている。

<P248>
PANEL5

レーガン、カリフォルニア州知事:現実世界においてレーガンがカリフォルニア州知事を務めていたのは1967年から75年にかけて。

レーガン:ロナルド・レーガン(1911〜2004)。第40代合衆国大統領。共和党所属。1940年代は映画俳優として活躍。映画俳優協会会長、カリフォルニア州知事を経て、1980年の選挙で大統領に当選。強いアメリカの復活を掲げ軍備増強を進める一方、大幅減税による経済復興計画レーガノミクスを実施。財政赤字は倍増したものの、経済回復を成功させた。対外的には、グレナダ侵攻、リビア爆撃と第三世界に睨みを効かせ、ソ連との対決姿勢を強めて行ったが、1986年に改革派のゴルバチョフがソ連の書記長に就任すると一転して協調路線に転向。訪ソを果たし、緊張緩和路線によって東西冷戦に終止符を打った。

<P252>
PANEL8

ローリーがタバコを置き忘れている。ファイン刑事に気づかれたか。

<P253>
PANEL9

明日までに〜:この日は10月30日(水)。ドライバーグはP248-249と同じ服を着ているように見えるが、実は3日も経っている。

<P254>
PANEL1

午後には〜:時刻は午前8時半すぎ。作業内容からこの日が10月30日とわかるが、前ページは同じ30日でも明らかに夜なので、時間が前後していることがわかる。

PANEL6
ハンキーヘッド:詳細は不明。アメリカの伝統料理を出す店でないのは確かだが。

正義は時に、鷹のように〜:ヒーローたちの覆面と、アメリカの国鳥である白頭鷲の首から上の白い羽毛を、英語でフード(頭巾、覆面)と呼ぶことにかけている。

<P255>
PANEL1

例のアレの積み込み作業が続く中、船首に大きなシャッターのあるピラミッド宅配社の貨物船が近づいてくる。

PANEL4
漂流者の話:ナショナルコミックス刊『黒の船』#23、24に掲載された「漂流者」のこと。黒人少年バーニィが読み耽っているのは、そのリプリント版。

PANEL6
10月31日の日付に注目。前ページの最後のコマから、31日に移行しているものと思われる。

PANEL7
巨大なプラグからわかるように、アーチーの動力は電気である。

<P256>
PANEL1

教授とは、DR.マンハッタンことジョン・オスターマンのかつての上司ミルトン・グラスか。さすがに歳は取っているものの、ヴェイトの標的にはならずにすんだ模様。ニュースでコメントを求められるほど社会的認知度の高いグラスを犠牲にした方が世間へのインパクトは強いように思えるが、次元開発社に引き入れるのに失敗したのか(P370 PANEL2参照)。

PANEL2
KKK:クー・クラックス・クランの略。南北戦争時代から続く白人至上主義者の秘密組織。伝統的なアメリカの習慣と価値観を脅かすとして、黒人、ユダヤ人、東洋人、社会主義者などを糾弾、時には殺人さえ辞さない無軌道ぶりで、世論の非難の的となった。最盛期は1920年代で、以降は衰退の一途を辿っている。

PANEL4
宅配会社とは、ヴェイト配下のピラミッド宅配社のことと思われる。

PANEL6
カボチャの目に汁が垂れて、おなじみのパターンを描いている。窓の外を、子供たちが通りすぎようとしている。この時に、メイソン宅に寄っていれば……。

PANEL7
P257ともども、上のコマとの対比に注意。

<P258>
PANEL2

感謝祭:アメリカの休日で、11月の第4木曜日。信教の自由を求め、17世紀にメイフラワー号でイギリスからアメリカに渡ったピルグリムファーザーズの、新大陸での最初の収穫を記念する行事。家族がそろって七面鳥を食べる習慣があり、家長が切り分ける。ちなみに、1985年の感謝祭は11月28日。

<P259>
PANEL4

コバックスの胸に飛び散った血の染みは、ブレア・ロッシュ誘拐事件の際に彼が浴びた犬の血の染みの形状に酷似している(P200 PANEL4参照)。

<P261>
PANEL8

10月21日の夜に逮捕されたコバックスが22日に投獄されたとすると、約10日分の排泄物が溜まっていたことになる。

<P262>
PANEL5

画面右の男は、警官の帽子を被った囚人。

<P266>
PANEL3

ドアの上のデジタル時計によれば、現在11時00〜09分。
コバックスが、また砂糖を失敬している。

<P267>
PANEL3

デウス・エクス・マキナ:ラテン語で機械仕掛けの神の意味。舞台用語で、都合よく現れて、入り組んだ物語を収拾するキャラクター、またはアイデアを指す。

<P268>
PANEL1

この鍵が壊されるのも、これで最後。

PANEL7
壁に吊るされていた外骨格強化服が置き捨てられている(P254 PANEL7参照)。荷物の積み込みに使用したものと思われる。画面左の潜水ヘルメットらしきものも、元の位置から移動している。念のために持って行こうとしてやめたのか。

<P269>
PANEL2

バーニィが読んでいるページの下半分は、広告ページになっている。実際の誌面上のコマの大きさの違いにも注目。

<P271>
PANEL1

時刻は、運命の12時5分前。こんな遅くまで子供だけで出歩いているのか。

PANEL5
メイソンがナイトオウルとして活躍していたのは、少なくとも23年前である。犬の平均寿命が約10年であることを考えると、回想シーンに登場している覆面姿の犬と、現在彼が飼っているファントムが同じ犬だとは考えにくいが、DR.マンハッタンによって何らかの延命方法が考案されているのかもしれない。

PANEL7
ナイトオウルのパンチを食らっているのがスクリーミング・スカル。画面右奥はキャプテン・アクシスで、左がモーロック。

<P272>
PANEL1

メイソンの右目を横切った髪がおなじみのパターンを描いている。

PANEL7
記念写真のナイトオウルもまた同様である。

PANEL8
エレノア・ファージョン(1881〜1965):イギリスの女流童話作家。宮崎駿が、影響を受けた人物に名前を挙げている。

「ウォッチメン」原作コミック解説(23) CHAPTER 8 [P245〜P247]

<P245>
ホリス・メイソンとサリー・ジュピターの一連のシーンは、小道具や暮らしぶりなど、あらゆる要素が対照的。コメディアンの死によって、最後のミニッツメンになってしまった二人だが、どちらもその話題を持ち出さないところに、互いの複雑な心情が見て取れる。

PANEL3-4
ニューヨークのメイソンは6時のニュースを観ているが、サリーのいるカリフォルニアではまだ3時なので、彼女は昼メロを観ている。ニュースの画面に映っているのは、アフガニスタンの地図。北方からソ連軍が侵攻した事を示している(P222 PANEL5参照)。

PANEL9
ハロウィン:ケルト人の収穫祭に由来する万聖節の前夜祭(10月31日の夜)。幽霊や魔女が姿を現すとされており、子供達が幽霊の仮装をして「お菓子か悪戯か?」と言って、家々を回りお菓子をねだる習慣がある。気の早い子供達がハロウィンの準備をしているが、この日は10月26日(土)で、本番はまだ1週間近く先。

<P246>
PANEL5

ニクソノミクス:本作発表時の大統領ロナルド・レーガンが施策した経済政策「レーガノミクス」にちなんだ造語。減税、規制緩和、福祉削減&軍備増強などで、不況とインフレの改善に臨んだレーガノミクスは、財政赤字と引き換えに景気回復を果たしたが、ニクソンの経済政策は目立った効果は上げていない模様。ところで、この美容師とホリスの愛犬の対比はあまりに……。

PANEL6
鏡に映ったメイソンの表情に注目。一連の会話シーンで初めて表情が見えたシーンである。サリーは屈託なく微笑んでいるのだろうか。ところで、電話のダイアルの穴が8つしかないが、PANEL2では9つなので、単なる描き損ないで特に意味はないのだろう。実際は10個。

<P247>
PANEL2

77年の亡霊:有名なスローガン「76年の精神(スピリット)」にかけた言葉。"スピリット"には、"精神、亡霊"の意味があるが、「76年の精神」が1776年のアメリカ独立の"精神"を指しているのに対し、ノヴァ・エクスプレスのいう「77年の亡霊」は、1977年のキーン条例で消えたはずのヒーロー達が亡霊のように蘇ったことを指している。先週号でDR.マンハッタンの癌疑惑を暴き、今週号でも反ヒーローの特集を組むとは、反ヒーロー運動の急先鋒を自負するノヴァらしいが、結局はヴェイトの世論操作の一環でしかない。

PANEL3
ユートピア劇場で上演されているのは、1951年公開のSF映画の古典『地球の静止する日』。核戦争の悲劇を警告すべく来訪した宇宙人クラートゥは、地球人を説得するため、すべての機械を一時的に止めてしまうが……。東西の冷戦対立への危惧を示した作品であり、その精神は本作に通じるものがある。

「地球の静止する日」


PANEL7
P192 PANEL7と同じシーン。PANEL4の店主のセリフにもあるように、このページは10月27日(日)の出来事を描いており、P246から1日が過ぎている事になる。

7.08.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(22) CHAPTER 7 [P240〜P242]

<P240>
カンジンスキー:ワシリー・カンジンスキー(1866〜1944)。ロシア出身の画家。抽象絵画の祖とされる。ソビエト共産党、ナチスドイツと、政治に翻弄される非業の人生を送った。

モネ:クロード・モネ(1840〜1926)。フランス印象派を代表する画家。光を巧みに操り「光の画家」と呼ばれた。

マックス・エルンスト:ドイツの画家兼彫刻家(1891〜1976)。ダダイズム、シュールレアリズムの旗手として知られ、しばしば鳥をモチーフに用いた。

ツァイス:1846年にドイツのイエナで創業した光学機器メーカー。カメラや顕微鏡で有名。

マイブリッジ:エドワード・マイブリッジ(1830〜1904)。イギリス出身の写真家。後にアメリカに移住し、連続撮影の技法を発明した。彼の連続写真が発展する形で生まれたのが”映画”である。

ホルス神:エジプト神話の天空の神。隼の頭部を持つ人物の姿で描かれることが多い。

<P241>
ある友人の見舞い:ある友人とは、初代ナイトオウルことホリス・メイソン、入院中の知人とは、モスマンことバイロン・ルイスのことだろう。

V2ミサイル:第二次大戦末期にナチスドイツが実用化した世界初の弾道ミサイル。イギリス、ベルギーを中心に3000発以上が発射されたが、当時の技術では迎撃は不可能であり、高空より超音速で飛来するV2が人々に与える心理的脅威は、実際の被害をはるかに上回っていた。戦後、V2の技術者は米ソに連行され、各々の国のロケット技術発展に寄与した。

<P242>
T.A.カワード:トーマス・アルフレッド・カワード(1867〜1933)。戦前に活躍したイギリスの鳥類学者。

ハドソン:ウィリアム・ヘンリー・ハドソン(1841〜1922)。イギリスの鳥類学者。鳥類に関する多くの著作でも知られる。

パラス・アテネ:ギリシャ神話の女神。知恵を象徴する聖なる鳥フクロウを従えている。

7.05.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(21) CHAPTER 7 [P226〜P238]

<P226>
その言葉とは裏腹に、ドライバーグはトワイライト・レディとただならぬ仲にあった模様。

<P227>
PANEL1
ドライバーグはわずか1時間ほどで目を覚ましてしまった。

<P228>
PANEL3
窓に映った月がピースマークを描いている。

PANEL7
ドライバーグの復帰を歓迎するかのように、コスチュームのゴーグルが煌いている。

<P231>
PANEL4
コントローラーに表示された”ACL”とは、ボタンを押した次のコマでライトが点灯していることから、AC(交流)Lightの略だと思われる。

<P232>
PANEL1
操縦桿を右側のコクピットから左側に付け替えている。車と同じで左運転がデフォルトなのか。

PANEL7
二人が出てきたビルに描かれた「ヒロシマの恋人たち」は、他より積極的。

<P233>
PANEL1
アストロドーム:劇中世界のニューヨーク名物であるジオシック・ドームの一つで、ひときわ巨大。
実際のアストロドームは、テキサス州ヒューストンをフランチャイズとするヒューストン・アストロズのホームグランドで、世界初のドーム球場として知られている。劇中世界のアストロズは、ニューヨークを本拠地にしているのだろうか。

PANEL2
コンソールのレーダーに、二人の姿が映り込んでいる。

<P234>
PANEL4
ドライバーグは、ローリーの姿に見とれてボタンを押すのを忘れていた。

<P235>
PANEL1
通路の先端が窓枠を掴んで機体を固定させている。また、伸びると同時に手すりが起き上がる仕組みになっている。

PANEL4
スモーキー・ザ・ベア:アメリカの森林火災予防運動組合が1944年に採用した山火事防止キャンペーンのマスコット。森林消防隊の扮装をした熊で、今なお広く親しまれている。
スモーキー・ザ・ベア


PANEL7
ドライバーグがBGMに流したのは、1933年のヒット曲 『ユー・アー・マイ・スリル』。

背景にヴェイト社のビルが見える。位置関係からすると、社長室から見えていたのはアストロドームらしい(P24 PANEL4参照)。

<P236>
PANEL1
ほっとしたのか、緑のシャツを着た黒人女性が手巻きタバコで一服しようとしている。

PANEL5
大人たちが呆然とする中、少年だけが、去り行くヒーローに応えている。

PANEL7
ビリー・ホリディの〜:この曲が発表されたのは1933年だが、ホリディがカバーしたのは1950年。

<P237>
PANEL9
ナイトオウルの完全復活に、再びゴーグルが煌いている。

<P238>
PANEL1
ソケットに挿さずに立てかけてある操縦桿に注目。その時間さえもどかしかったのか。

床にパイプタバコが転がっている。

PANEL9
月とアーチー、雲、火事の煙がピースマークを形作っている。

PANEL10
ヨブ記:旧約聖書の一部で、敬謙な信徒ヨブの受難の物語。引用された一節は、サタンによって皮膚病に侵され、周囲の人々にそしられ、神への祈りも届かない、現在の惨めな己の身の上を嘆くヨブの言葉。だが、それでもなお彼は神を信じ続け、信仰のあり方を示す。

<P239>
アメリカ鳥類学協会:1883年に設立された、アメリカ最古にして最大の鳥類学者連合組織。会員数は約4000名。

7.02.2009

「ウォッチメン」原作コミック解説(20) CHAPTER 7 [P210〜P225]

<P210>
ローリーの指の跡とゴーグルに映ったアーチーの機首が、ピースマークと破滅時計の双方を形作っている。

<P211>
PANEL7

ローリーはゴーグルと同じ位置に触れている。光が灯ったことで、コスチュームとアーチーに再び命が宿ったかのように見える。

<P213>
PANEL7

画面右端のケースの中のナイトオウルの像に注目。先輩のホリス・メイソン同様、引退の際に贈られたものか。

<P215>
PANEL3

記念品のケースの上には、フクロウの剥製らしきものが飾られている。かつてのペットか。

PANEL7
ハーバード:1636年に創立されたアメリカ最古の大学(私立)。ボストン郊外のケンブリッジ市に位置し、世界でも有数の名門校として知られる。

<P216>
PANEL1

77年には〜:反ヒーロー暴動の夜のことか(P56参照)。血は争えないらしい。

PANEL5
シートは、床の溝に沿って動く仕組みになっている(P218 PANEL4の三面図を参照)。

PANEL6
G.I.ジョー:1964年にハズブロ社が発売した世界初のアクションフィギュア。59年にライバルのマテル社が発売した女児向け着せ替え人形「バービー」の成功を受けて企画されたとされ、第二次大戦時の米軍をテーマに、ベトナム戦争開始当時の”戦記ブーム"に乗って大ヒットを記録した。21箇所が可動する約30cmのフィギュアを中心に、フィギュアに装備できる機関銃や迷彩服など、様々なアクセサリーを販売。トランスフォーマーと並ぶハズブロ社の主力商品として、形を変えながら今なお展開されている。ちなみにG.I.ジョーとは、第二次大戦時のアメリカ兵の俗称で、G.I.は、Government Issue(官給品)の略。
ところで、G.I.ジョーが女の子向けの玩具でないのは言うまでもないが、ローリーは1949年生まれなので、発売時は既に15歳だったことに…。

オレンジのユニフォームには放射能標識が描かれており、放射能防御機能があるものと思われる。なお、これらの特殊コスチュームは、極地用の白いバットスーツなど、様々な用途のコスチュームが登場する1950年11月発売の『ディテクティブコミックス』#165「バットマンの奇妙なコスチューム」が元ネタだろう。
『ディテクティブコミックス』#165の表紙。


<P217>
PANEL5

『王様の剣』 :1963年公開のディズニー長編アニメ映画。6世紀のブリテンに君臨した伝説の王アーサーの若き日の冒険を描いている。T・H・ホワイトが39年に発表した児童小説『永遠の王』の第一部を映画化したもので、みなしごの少年ワートが魔術師マーリンに見初められ、岩に刺さった剣を引き抜き、王の証を立てるまでを描いている。

アルキメデス:マーリンが飼っている喋るフクロウ。原作小説にも登場する。

魔術師マーリン:アーサーの助言者である魔術師。ワート少年の王たる資質を認め、彼に英才教育を施す。

PANEL8
本作では使用されなかったが、現役時代のナイトオウルは、バットマンばりにスーパーカーや小型ヘリを駆使していたらしい。

<P218>
PANEL4

円卓騎士団:アーサー王に仕えた騎士たちの呼び名。君主と臣下という身分の区別を嫌ったアーサー王は、配下の騎士たちを上座下座のない円卓に着かせた。いつしか円卓は、アーサー王の宮殿キャメロットの象徴となり、騎士たちは円卓の騎士と呼ばれるようになったのである。

三面図の内部図解によれば、エンジンスペースは非常に小さく、キャビンの後ろに2台のホバーバイクが収納してあるのがわかる。

<P219>
PANEL1

コートのボタンは全部ついていた:ロールシャッハは、ブレア・ロッシェ誘拐事件の際にコートのボタンとショルダーストラップが外れて以来、修繕せずにずっとそのままにしていた。コートは事件の際に着ていたもの以外にも、少なくとも1着は替えがあったようだが、そちらも同じ位置のボタンと肩ベルトが取れたままになっていた。取れた姿こそが”真”のロールシャッハだと考え、自ら千切ったとも考えられる(P12 PANEL1P200 PANEL4P318 PANEL2参照)。

PANEL9
ゴーグルには時刻表示機能もある。

<P220>
PANEL1

ニュートリノ:物質を構成する最小単位、素粒子の一種。1930年代にその存在が提唱されたものの、質量がゼロに等しく観測が極めて困難なため、今なお未解決の事象が多い。

PANEL2
ディーボ:1974年にオハイオ州で結成されたテクノ・バンド。1978年のアルバム 『頽廃的美学論』で、世界中にテクノ・ニューウェイブムーブメントを巻き起こした。なお、ディーボ(DEVO)とは、De-Evolution(退化)の略称で、彼らのテーマである「人間退化論」を象徴している。
エナジードームと呼ばれる奇妙な帽子や、ゴーグル、黄色のジャンプスーツなど、アート色の強い衣装が特徴。いかにもパンクなペイル・ホースとは、少なくとも見た目的には似ていないように思えるが…。
ディーボ


PANEL3
ビリー・ホリディ:実在の黒人女性ジャズ・シンガー(1915〜1959)。史上最高のシンガーと評されるが、その生涯は、貧困、人種差別、薬物有毒など、波乱の連続であった。1945年生まれのドライバーグにしては渋い趣味。普通ならこの世代はロックだろう。

<P221>
PANEL3

悪魔のように〜:ポーランドでは、挽いたコーヒー豆を厚手のグラスに入れ、お湯と砂糖を加え、豆がらが底に沈むのを待って飲むのが一般的だという。

PANEL6
テレビの上のフクロウの置物に注目。初代ナイトオウルから贈られたものか(P15 PANEL4参照)。

<P222>
PANEL3

ニュースの内容から、本章は10月25日から26日にかけての出来事だとわかる。

PANEL7
ニュース映像の戦車は、当時のソビエト軍の主力中戦車T-62か。
(画像はAce製プラモデル・パッケージ絵)


PANEL8
ヒロシマ特集:DR.マンハッタンが読んだ号と同じものだろう(P132 PANEL6参照)。

PANEL9
グリーナム・コモン基地:イングランド南東部バークシャー、グリーナム・コモンには米空軍の基地が置かれ、対ソ戦略の一翼を担っていたが、1982年、レーガン政権の陸上発射巡航ミサイル配備決定に際し、女性平和活動家を中心とする3万人が「人間の鎖」で抵抗、ミサイルの搬入を阻止した。反戦運動はその後も続き、2000年、ついに米軍基地は撤去された。イギリスの反戦運動の象徴であるグリーナムだが、劇中ではあえなく鎮圧されてしまった模様。

画面奥の電気パトカーに注目。

<P223>
PANEL1

マンハッタン・トランスファー:1972年に結成された男女各2名による人気コーラスグループ。DR.マンハッタンによる”トランスファー=転送”の駄洒落。

PANEL4
例のニューススタンドの角を曲がったところが高次空間研究所の入口。画面左端にバーナードとバーニィの姿がちらりと見えている。

<P224>
PANEL2

チャリティ公演P23 PANEL6参照。

PANEL4
机の上に置かれたノヴァ・エクスプレスの表紙のDR.マンハッタンが二人の様子を覗いている。

<P225>
PANEL3-4

時計を見ると、ドライバーグは実に4時間以上もがんばったようだが…。

人気バンド、ペイル・ホースのリーダー、レッド・デスが初登場。この二人が実況と解説とは、どんな番組だろうか。

PANEL2
時計によれば、放送終了は午前2時。